キョン×古泉 ※もし古泉が歳を大幅にサバ読んでいたら…という捏造話です。
前方にハルヒ・朝比奈さん・長門の女性陣、その後ろを5歩ほど遅れて俺と古泉が肩を並べて、夕焼けに赤く染められた坂道をだらだらと下っている。SOS団員のいつもの下校風景だ。
隣で微笑を湛えて歩く古泉は、当然俺と同じ高校の制服を身につけていて違和感皆無なのだが、実は高校一年生というのは仮初めの姿なのだ。実年齢25歳!とまるまる一回りもサバを読んでいたことを告白されたのは、つい2週間前のことである。未だに信じ難い爆弾発言だ。
「どうかしましたか?」
人畜無害な笑みを浮かべたツラをこちらに向ける。別に。と返すと軽く首を傾げて前に向きなおった。古泉と違って、俺の表情には少々有害なモノが含まれているに違いない。分かりやすく言うと下心である。
俺と古泉は一応恋仲というヤツで、実年齢を暴露された日に1度だけ身体を重ねている。それ即ち、それから2週間全くしていないということになる。平日・休日無関係に行われるSOS団の活動と、古泉の例のアルバイト絡みが原因でおあずけをくらっていた。常に一緒にいるにもかかわらず2人きりにはなれない生殺し状態だった。1回しちまえば後は速いという展開を望んでいたんだがな。
ヤりたい盛りの高校生としてそろそろ我慢の限界だ。ガッついてるのは俺だけか、古泉は平気なのか。俺が青いだけなのだろうか。そろそろ行動に移してもよかろう、移すべきだと俺は後先考えず古泉に耳打ちした。
「解散後、バレないように戻って来い」
古泉は頭上にクエスチョンマークを浮かべながら無言で頷いた。
いつもの解散場所には先に俺が戻り、3分くらい経ってから古泉が早足で駆けてきた。
「何でしょうか」
「デートしようぜ?」
このような誘い方は初めてだったので、古泉は意表を突かれたように目をしばたかせる。本当はストレートに「セックスしようぜ!」と言いたい気持ちをぐっと我慢した。
「…デート。いいですねぇ」
はにかんだ笑顔が眩しいね。言葉選びが成功して心中でガッツポーツを作る。だってほら、恋愛シミュレーションゲームなんかでもいきなり直接的な言葉で攻めると好感度が下がっちまうだろ?フラグは立てる順序があるのさ。
誘っておいて全くのノープランだった俺は、とりあえずローカル線を乗り継いでSOS団不思議探索活動等の待ち合わせ場所としてお馴染みのN駅へ繰り出すことにした。駅直結の大型デバートの本屋で立ち読みしたり、CDショップの視聴コーナーに入り浸ったりして放課後デートを楽しんだ。冷やかしばかりの金を使わないデートだったが、横についてくる古泉は結構楽しそうにしてくれてたと思う。
現在はマクドで向かい合わせて座り、まったりとバーガーセットを食している。あくまで上品にポテトを咀嚼する古泉を眺めていたら、ふっと悪戯心が芽生えた。
「うわ!何するんですか」
机の下に手を滑り込ませて古泉の太腿を撫でました。
「そうじゃなくってですね…」
困惑顔の古泉は椅子ごと身体を引いて逃げていった。チッ。
「触りたくなったから」
…好感度上げ?何それおいしいの?
「2週間前。古泉とヤって以来、1人でしてもつまらなくなっちまったんだ」
「ちょ、ちょっといきなり何言い出すんですかー!」
「お前はさ、平気なのかよ」
俺だけがお前を目前にするたびにムラムラしてたのか。2週間前のこと何度も思い出して堪らない気分になって、でも我慢して。
「ええっと…ですね……」
こっちがぶっちゃけてるんだ。お前も正直に言えよ。
「…僕だってあなた程ではありませんがまだまだ若いつもりです。こう見えても身体を持て余すこともあって、ええ、現在進行形で持て余していますね。あなたと夜を共にしてから何だか言葉で言い表せない感情に襲われることがあるんですよ」
「それ、性欲って解釈していいのか」
「なっ。人が折角オブラートに包んだ表現を努めているというのに…」
古泉は焦って回りをキョロキョロ見渡した。誰も聞いてねえって。それはいいからさ、要するに肯定ってことだろ?
「あー。はい。認めますよもう」
大袈裟に肩を落としたいつもの仕草が妙に可愛らしく見えた。なんだよ普段から素直に態度で表わせばいいのに。俺は古泉も同じ気持ちだったことに喜び顔面をむずむずさせつつ、
「古泉、これからラブホ行こう」
今更だが顔を寄せて小声で誘った。このいい雰囲気(俺的に)の中だ、拒否はされないだろうと不思議な自信があった。これから古泉の家へ行って一発致して帰途につくのは時間的に家族の非難を浴びそうだし、俺の家には約一名ナチュラルに自室に闖入してくる奴がいるし。そのほか単純にラブホテルというものに対する好奇心もあった。
「いいですけど。この辺りにあるんですか?」
オーイ。誘いを受けるに相応しい、もうちょっと可愛げのあるリアクションを取ってみろよ。
「25の男に可愛げを求めないように」
うっわ本当に可愛くねー。
「駅の割と近くにそれらしい建物があったはずだ。ただ…利用料金の相場が分からないんだが」
悲しいかな高校生の所持金は限界値が低く設定されているもので。本日のデート&食事内容からしてしょっぱいしな。
「3時間以内の休憩利用ならば、3000〜5000円くらいが相場じゃないでしょうか」
そうなのか…財布と相談だ。て、ちょっと待て何故そんなことを知っているんだお前。俺はジト目で問い詰めた。
「ち、違いますよ。誓って利用したことはありません」
どうだか。実年齢を知って以来、こいつに過去の経験があるのか大いに気になっているんだ。
「僕が支払いますよ」
「いやいや俺が出す」
…べきだろう。奢りのホテルでヤるなんぞ男のプライドが許さない。
「考え方が古いですよー。それに僕も男ですし。ここは割り勘ということでいかがでしょう?」
財布と相談した結果、情けないことに1人で全額出すのは厳しかったので、渋々古泉の案に乗ることにした。…貯金しよう。
ホテルに着いてからは行為の前に、知りたかった古泉の過去について根掘り葉掘り訊ねていた。俺の問いのほとんどが機関とは無関係なものだったから、正直な受け答えをしていたと思う。意外だったのは、古泉が高校生活を送るのは正真正銘、初めてのことだということ。
「僕は中卒だったんです。家庭の事情というやつでね」
…話さなくていいぞ。
「お心遣いありがとうございます。ああ、決して想像されたような悲劇的な事情ではありませんからね」
「北高で高校生を演じることになったのは機関の指示ですが、現在は純粋にこの状況を楽しんでいる自分がいます」
「憧れてを抱いていたドラマのような高校生活を送っているんですから。恋人もできましたし、ね」
言って見事なウインクを飛ばしてくる。俺はその理想のドラマの中の恋人役をしっかり務められているだろうか。古泉は俺の不安を読み取ったのか、大きく頷いてふわりと微笑んだ。
「これからもあなたが楽しませてくれるんでしょう?」
他に何か聞きたいことはありますか、と付け足した。
「いいや」
古泉のセリフにはっと気づかされた。俺は一体何にこだわっていたのだろうか。過去なんかより今日と未来のことの方が重要じゃねえか。何故なら現在俺と古泉は同じ舞台を共有して、言葉を交わせて触れ合える距離にいる。この先の未来だってきっと。ずっとな。
「俺が70になったら古泉は80か…」
未来に想いを馳せて口から出たのはこんな台詞だった。
「ふふっ。いきなり飛びましたね。傘寿まで生きられるでしょうか」
「俺より先に死んだら、死刑な」
涼宮ハルヒ団長のセリフを借りて言ってみた。
「何ですかそれー」
俺達は声を上げて笑い合った。
と言った具合に俺達はやたらとくっちゃべっていて、ラブホ初体験だというのに施設をまるで有効活用していなかった。ああ、もちろん2週間溜まっていた分はしっかりヤったぞ。前と同じようにベッドの上で、普通に。これまた同じようにお互いいっぱいいっぱいだったな。
次の機会にはそれっぽいプレイもしてみたいものだね。
一応関西だからマクド呼びでいいのかな。関東の方だとマックですよね。色々悪ノリが過ぎましたすみません。でも意外と健全な流れになってしまった。
2007/9/19